富士総合火力演習(総火演と以下略します。)の見学に行ってきました。
非常に迫力があり、練度の高さはわかりました。

総火演から考える日本の安全保障を短期(数年以内)、中期(10年以内)に分けて考えます。

さらに、私の改善策を示します。

10年以内までを見れば、陸上自衛隊は縮小すべきであるというのが私の結論です。



戦略論はある程度やりましたが、部隊の動かし方まで知っているわけではありません。
戦略論とは、軍事力をいかに使うかということです。

個々の部隊の動かし方を考慮し安全保障、戦略論から総火演を見たいと思います。

今回の総火演の想定される事態です。

どうやら、それなりの大規模な陸戦を想定しているように思えます。
具体的には、冷戦期における北海道上陸作戦とまではいきません(戦車の数が大きく異なる)が、一定程度の陸戦を想定しており、おそらくは沖縄本島等での陸戦を想定しているような装備体系でしょう。さらに長期的にいえば、海外派遣まで視野に入れているかもしれません。

尖閣諸島が一番侵略の蓋然性が大きな事態です。

どうみても、これを主に念頭に置いたものとはいえません。
もっとも、数年以内には水陸両用車やオスプレイ等の導入により、一定程度の装備はそろいます。
ただ、その新装備が主となるべきです。現装備で最も有効なのは、地対艦、地対空ミサイルでしょう。

さて、離島奪還と称し、離島奪還が想定されていません。

「統合機動防衛力」を重視するものの、それはまだ完成されていません。
そして、装備品があるからといって、運用がすぐにできるものではありません。

さて、今回の演習をみての下の4つの要素から分析していきたいと思います。

      安全保障 戦略論
   短期 Ⅰ     Ⅱ     
    中期 Ⅲ     Ⅳ     


Ⅰ:抑止力にならない。
Ⅱ:従来よりはマシ
Ⅲ:抑止力にならない(機会主義的な人民解放軍に侵略を誘発)
Ⅳ:大きなマイナス

Ⅰについて
安全保障を考える上で、現在の装備を見た場合、抑止力になるようには見えません。
というのも、簡単にいえば、抑止とは侵略するコストが利益を上回るため行動を思いとどまるということができますが、コストを支払わせるだけの運用体系にはなっていないからです。

具体的にいえば・・・

Ⅱについて
北海道の陸自は未だに、主たる目的が上述の比較的大規模な陸戦です。つまり、現在、一番可能性の高い脅威に対応していません。対応していないということは、抑止にならないということです。現在の方向性は間違ってはいませんが、縦割りで保守的な陸自がどう改革を受け入れるかが重要になるでしょう。重視すべきは、パワープロジェクションとA2/ADです。パワープロジェクションにおいては、陸自は水陸両用車やオスプレイの導入という方向性は正しく、地対艦、地対空ミサイルに重点的に資源を配分すべきですし、北に大規模な冷戦型の部隊を張り付けるのは得策ではありません。ただ、改善のきざしが見えるということからは従来よりはマシであるといえます。


Ⅲについて
大きな改革が行われず、漸次主義でいけば、侵略を誘発しかねない極めて危険な状態に陥るでしょう。すなわち、米国の相対的な衰退に加え、自衛隊が奪還ないしは上陸阻止できないと認識させれば、侵攻の可能性は高まります。

Ⅳについて
悲観的なシナリオですが、大転換を図らない限り、尖閣諸島を守ることはできません。10年以内に沖縄戦が起きる可能性は小さく、あったとしても、海空自が主体となります。具体的に何をどこにおくかということが全くできていません。


改善策は?

改善策はセキュリティ・ディレンマの生じない範囲で、すなわち、尖閣にいつでも派遣できるが、派遣しないという慎重さが必要です。そして、抑止の面からは、対空、対艦ミサイルに加え、巡航ミサイルの装備が必要であると思われます。

米国の沖縄への核配備が極めて効果的です。政治的な説得のために核を移動させるということは有効です。


戦争をいかにおわらせるかの議論にもなりますが、徒に戦線を拡大し、沖縄本島にまで侵攻することは10年以内には考えにくいものです。

つまり、尖閣諸島及びその周辺の離島までが対象となるのであり、本格的な陸戦の想定は不要でしょう。
米海兵隊的な機能が求められます。本土あるいは、沖縄本島から離れているため、兵站の維持、陸海空による統合作戦の中でも海空が主役となると考えられます。

資源面、財政状況をみれば、防衛費はせいぜい現状の2倍程度が限度ではないでしょうか。

そこで、陸自を縮小し、一番可能性の高い離島での作戦を主たる任務とし、海空自に予算を回すというのが必要であるといえるでしょう。

おまけ。
ネオリアリズムは考えられる全ての脅威を対象とした軍備を整備すると考えますが、ポストクラシカルリアリズムは可能性の高い分野での軍備を整備し、経済的な繁栄を求め、長期的な視点に立っていると思われます。